<20度近い温度差をどう解釈すべきか(5)> [分析]
これまでの観測結果から、次の仮説を立てました。(詳しくは(4)http://takasurvival.blog.so-net.ne.jp/2011-08-13にあります)
1)「緑のカーテン」の効果は、日光を遮ることによる「日陰効果」と植物から水分が蒸発する際に周囲から「気化熱」を奪う「気化熱効果」の2種類がある(=これは一般に言われていることです)
2)このうち、「気化熱」部分については、その日の千葉市の最高気温(千葉測候所で観測された公式記録)と安定的な相関関係にある拙宅の「緑のカーテン」内の最高温度との「差」に当たるのではないか。
3)一方の「日陰効果」については、「緑のカーテン」内外の温度差から、2)から導かれる「気化熱効果」相当分を差し引いたものに相当するのではないか。
そして、二つの推計式を作りました。
①千葉市の最高気温から、「気化熱相当分」を求める推計式
②「緑のカーテン」外の最高温度から、「日陰効果相当分」を求める推計式
この二つの推計式を使って、毎日の観測結果に重ね合わせたのが下のグラフです。
「カーテン」内外の最高温度差と、推計した日陰効果、気化熱効果
実測した内外温度差(折れ線)を、「日陰効果相当分」+「気化熱相当分」がシミュレートしています。ただし、「気化熱相当」分は極めて小さいので、実質的には「日陰効果」が「緑のカーテン」効果の大部分ということだと思います。
さて、次の大きな疑問は、「緑のカーテン」外の温度が何によって決まるかです。
これまでの計測で分かっているのは、
「千葉市の気温との相関は低い」ということです。もちろん、気温が高いほど高くなる傾向はありますが、それよりももっと、直接的に影響を与えているものがあると思います。
それを私は直射日光による輻射熱だと考えていて、ブログでもそう書いてきました。
そこで、今回は二つのデータを集めました。
一つは千葉市(千葉測候所)で観測される日々の日照時間です。これは気象庁ホームページにあります。
もう一つはNEDO (独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射データベースです。
気象官署・アメダス836地点について、1990~2003年の日射量がデータベース化されています。
なぜ、過去のデータベースを使うのかというと、拙宅では日射量は計測していませんし、現在は、千葉測候所でも日射量は計測していないからです。過去のデータを借りるしかありません。
ではまず、日照時間のデータを見てみます。これは、両方ともに実測値です。
「緑のカーテン」外の最高温度とその日の日照時間の関係
(単位は「カーテン」外が℃、日照時間は時間)
どうでしょうか。よく似ていませんか。
日光が当たらない日には屋外の温度が上がらず、日当たりが良い日に温度が上がるのは当然といえば当然ですね。ただ、このグラフでは、8月上旬などに見られる「カーテン」外の温度が50度を超えるような異常な高温になった日に、特に日照時間が長くなっているわけではありません。全体の流れとしては相似形ですが、個別の日の動きは必ずしも一致していないのです。
その理由の一つは、今回の実験がすべて「最高温度」を対象に分析しているところにあると思います。仮に日照時間が長くても、日が高い時間帯に曇っていれば、「カーテン」外の最高温度はそれほど高くならないからです。もちろん、その逆のパターンもあるでしょう。
次に過去の平均日射量のデータを見てみます。これも実測値ですが、2003年までのデータに基づいています。
★NEDOのデータベースソフト「標準気象・日射データ(METPV-3)」を利用
記録は1時間単位で取られています。その日の平均をヒシ型で、最大値を四角で示しています。
特徴的なのは、7月前半には最大値、平均値ともにかなり低くなっていることです。明らかに梅雨の影響でしょう。
梅雨明け後の7月17日から、急に日射量は上がります。特に、「最大値」を見ると、かなり法則性を持って動いているように見えます。赤い線で囲んだ部分がそうです。緩やかに落ちていますね。
気象庁の「気象観測の手引き」には、
「日射は,大気中を通過する間に空気分子,雲などにより部分的に吸収,散乱,反射される」とあります。
逆に言えば、「吸収、散乱、反射」が少ない日には、太陽の輝きそのものが持つ「実力」が現れ、それが赤い線で囲んだ部分に反映されていると見ていいと思います。
夏は太陽高度が高いため日射量が大きくなリます。冬は逆に減ります。だから、日射量は邪魔者がない「実力」ベースでは、定期的に上下動を繰り返す正弦曲線を描き、赤く囲んだ部分は、その一部を構成していると思われます。
ただ、これほどの短期間であれば、擬似的に直線とみなしても問題ないでしょう。赤い部分にデータを絞り込んで、「真の日射量」の推計式を作りました。それが次のグラフになります。
推計「真の日射量」と日照時間、「緑のカーテン」外の関係
X軸は7月17日を1とした経過日数です。推計日射量は左目盛りで単位は0.01MJ/m2、日照時間と「カーテン」外の最高温度は右目盛りで、単位は時間と℃です。
「緑のカーテン」外の最高温度は、大きな傾向としては日射量の変動を受け、短期的には日照時間の影響を受けていると推測できる気がします。
計測設備とデータと私の能力の制約があり、この辺りが結論を導く限界だと思います。
日射と「カーテン」外の関係をもう少し深く解明したいと思えば、拙宅に日射計を設置して、両者の関係を調べないといけないのですが、その当たりは今後の課題ですね。(来年やるかねぇ)。
千葉市の気温と拙宅周辺の気温について [分析]
www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/tebiki.pdf
という非常にわかり易いガイドがありました。
その第3章に以下のような記述を発見しました。以下、引用です。
「地表付近の気温は,建物,アスファルト道路といった局地的な構造物などの影響を受けやすいが、開けた自然の土地では比較的広い範囲ではほぼ一様である。日本の毎日の最高・最低気温は,平均的にはおよそ400㎞2の範囲でおよそ1℃内に約60%が入るといった調査もある」
400km2の範囲といえば、20キロ四方ですから、7キロ程度の距離なら、十分「ほぼ一様」の範囲に入るのではないかと思います。
千葉市の気温を拙宅周辺の気温と同じとみなしていい根拠を見つけたと思います。
<20度近い温度差をどう解釈すべきか(4)> [分析]
1)千葉測候所が観測している千葉市の最高気温と、そこから約7キロ西北にある拙宅の「緑のカーテン」内の最高温度には、強い連動性(相関)がある。連動性を示すR²は0.9程度(1の場合は完全に連動) 2)ただし、千葉市の最高気温よりも、「緑のカーテン」内の最高温度の方が低くなる傾向がある。具体的には千葉市の最高気温が1度上がった場合にも、「カーテン」内の温度の上昇は0.9度程度にとどまる関係が見て取れる。 4)だとすれば、「カーテン」内外の温度差を①気化熱効果②日陰効果にわけて分析できるはず。 5)そこで、観測日ごとの「気化熱相当分」を算出した。 |
日 | 千葉市の 最高気温 |
カーテン外 | カーテン内 | 内外温度差 | 推計 カーテン内 |
推計気化熱 相当分 |
暫定日陰 効果相当分 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
6月29日 | 35 | 38.3 | 34.1 | 4.2 | 34.25 | 0.75 | 3.45 |
6月30日 | 33.8 | 34.3 | 31.6 | 2.7 | 33.19 | 0.61 | 2.09 |
7月1日 | 33.7 | 36.5 | 32.1 | 4.4 | 33.11 | 0.59 | 3.81 |
7月3日 | 31.4 | 37 | 30.7 | 6.3 | 31.08 | 0.32 | 5.98 |
7月4日 | 30.8 | 33 | 30.5 | 2.5 | 30.55 | 0.25 | 2.25 |
7月5日 | 31.4 | 35.1 | 31.3 | 3.8 | 31.08 | 0.32 | 3.48 |
7月6日 | 32.1 | 38.7 | 32.6 | 6.1 | 31.70 | 0.40 | 5.70 |
7月7日 | 29.3 | 32.8 | 29 | 3.8 | 29.23 | 0.07 | 3.73 |
7月8日 | 30.2 | 29.4 | 28.1 | 1.3 | 30.03 | 0.17 | 1.13 |
7月9日 | 30.5 | 34.2 | 31 | 3.2 | 30.29 | 0.21 | 2.99 |
7月10日 | 31.5 | 35.3 | 31.5 | 3.8 | 31.17 | 0.33 | 3.47 |
7月11日 | 31.9 | 35 | 31.5 | 3.5 | 31.52 | 0.38 | 3.12 |
7月12日 | 31.6 | 35.4 | 31.8 | 3.6 | 31.26 | 0.34 | 3.26 |
7月13日 | 31.4 | 40.3 | 31.5 | 8.8 | 31.08 | 0.32 | 8.48 |
7月14日 | 32.3 | 42.6 | 32.1 | 10.5 | 31.87 | 0.43 | 10.07 |
7月15日 | 33 | 42.8 | 32.4 | 10.4 | 32.49 | 0.51 | 9.89 |
7月16日 | 31.8 | 40.6 | 31.3 | 9.3 | 31.43 | 0.37 | 8.93 |
7月17日 | 33.8 | 43.1 | 33.2 | 9.9 | 33.19 | 0.61 | 9.29 |
7月18日 | 32.4 | 36 | 30.7 | 5.3 | 31.96 | 0.44 | 4.86 |
7月19日 | 29.1 | 30 | 28.9 | 1.1 | 29.06 | 0.04 | 1.06 |
7月20日 | 30.1 | 34.5 | 29.8 | 4.7 | 29.94 | 0.16 | 4.54 |
7月21日 | 23.1 | 27.1 | 24.7 | 2.4 | 23.78 | -0.68 | 3.08 |
7月22日 | 25.2 | 44 | 26.4 | 17.6 | 25.63 | -0.43 | 18.03 |
7月23日 | 24.7 | 32.2 | 24.3 | 7.9 | 25.19 | -0.49 | 8.39 |
7月24日 | 28.2 | 40.6 | 28.1 | 12.5 | 28.27 | -0.07 | 12.57 |
7月25日 | 30.6 | 42.9 | 29.8 | 13.1 | 30.38 | 0.22 | 12.88 |
7月26日 | 29.5 | 34.6 | 27.6 | 7 | 29.41 | 0.09 | 6.91 |
7月27日 | 29.7 | 39.1 | 28.4 | 10.7 | 29.59 | 0.11 | 10.59 |
7月28日 | 29 | 33.3 | 27.7 | 5.6 | 28.97 | 0.03 | 5.57 |
7月29日 | 28.4 | 43.9 | 28.3 | 15.6 | 28.44 | -0.04 | 15.64 |
7月30日 | 29.3 | 46 | 28.5 | 17.5 | 29.23 | 0.07 | 17.43 |
8月1日 | 27.8 | 45.7 | 28.1 | 17.6 | 27.91 | -0.11 | 17.71 |
8月2日 | 29.7 | 46.8 | 29 | 17.8 | 29.59 | 0.11 | 17.69 |
8月3日 | 30 | 49.2 | 29.5 | 19.7 | 29.85 | 0.15 | 19.55 |
8月4日 | 31.8 | 51.7 | 31.1 | 20.6 | 31.43 | 0.37 | 20.23 |
8月5日 | 30 | 50.5 | 31.9 | 18.6 | 29.85 | 0.15 | 18.45 |
8月6日 | 31.2 | 45.8 | 32.1 | 13.7 | 30.91 | 0.29 | 13.41 |
8月7日 | 33.3 | 46.8 | 32.6 | 14.2 | 32.75 | 0.55 | 13.65 |
8月8日 | 32.6 | 46 | 32.8 | 13.2 | 32.14 | 0.46 | 12.74 |
8月9日 | 33.8 | 46.2 | 33.7 | 12.5 | 33.19 | 0.61 | 11.89 |
8月10日 | 34.3 | 45.7 | 34.2 | 11.5 | 33.63 | 0.67 | 10.83 |
8月11日 | 34.3 | 46.4 | 33.9 | 12.5 | 33.63 | 0.67 | 11.83 |
8月12日 | 36.3 | 53 | 35.2 | 17.8 | 35.39 | 0.91 | 16.89 |
<20度近い温度差をどう解釈すべきか(3)> [分析]
日 | 千葉市の気温 | カーテン外 | カーテン内 | 推計カーテン内 | 推計気化熱相当分 (「千葉市の気温」-「推計カーテン内」) |
---|---|---|---|---|---|
6月29日 | 35 | 38.3 | 34.1 | 33.77 | 1.23 |
6月30日 | 33.8 | 34.3 | 31.6 | 32.76 | 1.04 |
7月1日 | 33.7 | 36.5 | 32.1 | 32.68 | 1.02 |
7月3日 | 31.4 | 37 | 30.7 | 30.75 | 0.65 |
7月4日 | 30.8 | 33 | 30.5 | 30.24 | 0.56 |
7月5日 | 31.4 | 35.1 | 31.3 | 30.75 | 0.65 |
7月6日 | 32.1 | 38.7 | 32.6 | 31.33 | 0.77 |
7月7日 | 29.3 | 32.8 | 29 | 28.98 | 0.32 |
7月8日 | 30.2 | 29.4 | 28.1 | 29.74 | 0.46 |
7月9日 | 30.5 | 34.2 | 31 | 29.99 | 0.51 |
7月10日 | 31.5 | 35.3 | 31.5 | 30.83 | 0.67 |
7月11日 | 31.9 | 35 | 31.5 | 31.17 | 0.73 |
7月12日 | 31.6 | 35.4 | 31.8 | 30.91 | 0.69 |
7月13日 | 31.4 | 40.3 | 31.5 | 30.75 | 0.65 |
7月14日 | 32.3 | 42.6 | 32.1 | 31.50 | 0.80 |
7月15日 | 33 | 42.8 | 32.4 | 32.09 | 0.91 |
7月16日 | 31.8 | 40.6 | 31.3 | 31.08 | 0.72 |
7月17日 | 33.8 | 43.1 | 33.2 | 32.76 | 1.04 |
7月18日 | 32.4 | 36 | 30.7 | 31.59 | 0.81 |
7月19日 | 29.1 | 30 | 28.9 | 28.81 | 0.29 |
7月20日 | 30.1 | 34.5 | 29.8 | 29.65 | 0.45 |
7月21日 | 23.1 | 27.1 | 24.7 | 23.77 | -0.67 |
7月22日 | 25.2 | 44 | 26.4 | 25.54 | -0.34 |
7月23日 | 24.7 | 32.2 | 24.3 | 25.12 | -0.42 |
7月24日 | 28.2 | 40.6 | 28.1 | 28.06 | 0.14 |
7月25日 | 30.6 | 42.9 | 29.8 | 30.07 | 0.53 |
7月26日 | 29.5 | 34.6 | 27.6 | 29.15 | 0.35 |
7月27日 | 29.7 | 39.1 | 28.4 | 29.32 | 0.38 |
7月28日 | 29 | 33.3 | 27.7 | 28.73 | 0.27 |
7月29日 | 28.4 | 43.9 | 28.3 | 28.23 | 0.17 |
7月30日 | 29.3 | 46 | 28.5 | 28.98 | 0.32 |
8月1日 | 27.8 | 45.7 | 28.1 | 27.72 | 0.08 |
8月2日 | 29.7 | 46.8 | 29 | 29.32 | 0.38 |
8月3日 | 30 | 49.2 | 29.5 | 29.57 | 0.43 |
<20度近い温度差をどう解釈すべきか(2)> [分析]
20度近い温度差をどう解釈すべきか(1) [分析]
<「気温」という言葉について(2)> [分析]
オリジナルの<「気温」という言葉について>に書いたことはこの文書に換えます。
「カーテン」成長の証拠? 強まる”冷却”効果 [分析]
”ピークカット”が効果の本質?/節電ツールにぴったりか/室内計測の分析スタート [分析]
<「気温」という言葉について> [分析]
お陰様でこのブログも徐々に見てくれる人が増えてきました。ありがとうございます。
<追記>(2011年7月26日)
7月25日以降は、「気温」という表記は「気象業務法」に準拠した定義以外の場合は使わないことにしました。理由は、「このブログは法律違反なのか?!」で、説明しています。
このブログで測定しているものは、法律上の「気温」ではないので、25日以降は「温度」と表記するようにしました。